不動産を売る時の買取と仲介の違いとは?

家を売りたい

家や土地などの不動産を売るには多くの場合不動産業者を利用することになります。

その時にあなたが知っておかなければならないのは、その不動産業者の利用の仕方は一つではないということです。

どのように利用するかはあなた自身が決めなければなりませんのでこの章で理解を深めていきましょう。

一般的に業者を使って不動産を売るという場合、業者にお願いするのは「仲介」というものです。

もう一つ「買取」もしくは「直接買取」などと言われる利用法もあるのですが、メジャーではないもののケースによってはとても助かる方法でもあります。

両者の違いを知り、ケースバイケースで上手く使いこなせればあなたにとって有利な不動産売却につなげることができます。

それではまず「仲介」とは具体的にどのようなメカニズムでどんなメリットがあるのか見ていきましょう。

不動産売却における「仲介」のメカニズム

仲介というのはいわゆるマッチングをお願いすることです。

結婚仲介業をイメージして頂けると分かりやすいですが、例えば結婚したい男性の相談を受けた仲介業者が、抱えている女性会員をマッチングして結婚につなげるお手伝いをしてくれますよね。

不動産売却の仲介では家や土地を売りたいという希望がある方の相談を受け、その不動産を買いたいと思っている購入希望者とマッチングしてくれます。

不動産の場合結婚仲介業と違って必ずしも相談を受けた時点で購入希望者を会員などとして抱えているわけではありませんが、すでに「こんな不動産があったら買いたい」という希望を持った買い手候補からの相談を受けていることがあるので、この場合はマッチングが非常にスムーズに行われます。

もし丁度良い購入希望者がその時点でいなくとも、不動産業者は世に散在する数多の見込み客に向けて物件の宣伝広告を行ってくれます。

あなたも見たことがあると思いますが、地元で流通するフリーペーパーなどには多くの不動産物件が載っていますね。

あれらはその不動産業者が直に発行しているものもあれば、自社の関連企業が発行するものに掲載しているものもあります。

完全に他社が運営する広告媒体や新聞、テレビなどのマスコミに物件を掲載することもできますが、こういった媒体での広告料はかなり高く、小さい枠面でも数万円、比較的大きな枠面になると数十万円などもザラです。

ですので自社が運営する媒体や子会社、関連企業などが運営する媒体を利用して費用を抑えながらも広く世に物件を露出できるように工夫しています。

地元に流通するフリーペーパーなどはその物件が存するエリアに住む人に確実に物件を露出できるので効率的です。

また不動産業界専用のレインズというシステムを使って、地元以外の遠く離れたエリアに住む見込み客にもアピールできます。

これは例えば収益物件などにも利用できる場合、買い手からすると自分で住むわけではないので遠方にある物件でも購入対象になりますから、こちら方面へのアピールも有効になります。

また物件購入の相談を受けた同業他社にも情報を伝えることができるので、当該他社が抱える購入希望層へも物件の情報を使えることができ、買い手候補の発掘に大いに貢献してくれます。

このように「仲介」とは、その不動産業者を介して世に散在する多くの購入希望者や見込み客に対してあなたが持っている物件をアピールし、市場にいる買い手を探してもらえるものです。

ではもう一つの不動産業者の利用法である「買取」とはどのようなものでしょうか。

そのメカニズムを知って仲介との違いを探ってみましょう。

不動産売却における「買取」のメカニズム

「仲介」では不動産業者を介して市場にいる購入希望者や見込み客に対して物件をアピールし、うまくマッチングできたらその相手方を購入者として売買契約を結びます。

例えば人事異動のため、転勤先でマンションを探していた購入者や一家で住み替えを検討していた家族に中古一軒家を売却することになります。

一方、買取あるいは直接買取というのは上記のように市場にいる一般の購入層への売却ではなく、不動産業者が直接物件を買い取る方式をいいます。

不動産業者は一般の購入者のように買ってから自分でそこに住むわけではありませんが、業者にとっても利用価値があるからこそ買い取ってくれるのです。

どのような目的かは対象の物件の種類や状況によります。

例えば中古の一軒家であれば、古くなった内装や設備を改装して価値を上げ、これを転売したり賃貸してインカムゲインを得るなどの投資用物件として活用することができます。

土地であれば利用用途はかなり広がり、新築マンションを建てたりホテルを建設して宿泊業に用いたり、周辺の土地などと合わせて大規模な土地利用計画を練ることも可能です。

小さな不動産業者であっても、他の開発業者などデベロッパーと提携してビジネスを進めることもできます。

このように直接買取は市場にいる一般の買い手を探すのではなく、その業者が直に物件を買い取るものです。

仲介では登場人物は売り手(あなた)、業者、買い手の三者でしたが、買取では売り手(あなた)と業者の二者だけです。

構造としてはシンプルですが、買取にはデメリットもあります。

そこで仲介と買取のメリットやデメリットを比較して見てみましょう。

「仲介」のメリットとデメリットは?

不動産の仲介をお願いする時のメリットとデメリットを見て行きましょう。

仲介のメリット

仲介では市場にいる購入希望者層と対等の立場で交渉しながら細かい条件などの面で相手の譲歩を引き出したり、こちらも別の項目で一定の譲歩をしたりと調整しながら実際の売却金額を詰めていきます。

そこにはまずその物件の相場というものがあって、そこから押したり引いたりしながら話を詰めていきます。

特に売り急ぐような事情がなければ極端な値下げなども必要ありませんから、概ねその物件の市場相場付近で売却の妥結が行われることでしょう。

つまりあなたの物件が持つ本来の適正市場価格でもって売ることができ、金額的に損をせずに売却を終結させることができるのが大きなメリットです。

仲介のデメリット

一方デメリットは複数あります。

まず仲介では売却実現までに一定の時間がかかります。

まずは市場にいる見込み客に対して宣伝広告を行って物件の情報を露出し、目に止まらせたうえで当該客からのコンタクトを待ちます。

そしてコンタクトしてきた見込み客のうち大枠の条件が合う人には内見を行います。

実際に物件を見て状況を確認し、そこからリフォームなどの条件交渉や値下げ交渉などが入ります。

そして細部まで話を詰めて合意が形成されれば売買契約までたどり着けます。

その後は物件の引き渡しや残金処理、登記などの実務を終えてやっと売却が終了です。

あらかじめ業者が購入希望者からの相談を受けており見込み客を抱えている場合は宣伝広告の段階を省くこともできますが、その客層も必ず購入してくれるわけではありませんから多くの場合市場にいる他の客層にもアピールが必要です。

もう一つは仲介手数料の存在です。

不動産業者もボランティアではないので仲介によって利益を出さなければなりません。

売却を手伝って成功させることができれば、業者はその成功報酬を請求することができます。

請求できる金額には国が上限値を定めており、不当に高い金額を請求されることはありませんが、それでも数十万円~数百万円の手数料の支払いが必要になるでしょう。

確かに素人が自分だけで不動産の売却を進めるには実際問題実務の面で手間もかかりますし、多くのリスクを抱えることになるので現実的ではありません。

こうした難しい実務を引き受けてくれる不動産業者には相当の報酬の支払いが必要になることは仕方がないと思いますが、売却代金からは税金や諸費用で引かれてしまうので、手元に残るお金がさらに減ってしまうという点で負担感が発生するのも事実でしょう。

このように「仲介」では適正な市場価格で売ることができるので金額的に損が出にくいことが利点ですが、売却終結までに一定の時間が必要なことと、業者に支払う手数料が発生するという難点があります。

「買取」のメリットとデメリットは?

では次に買取のメリットやデメリットを見てみましょう。

買取のメリット

まずメリットとしては、仲介に必要な宣伝広告の期間が不要になるため売却終結までの期間が短くて済みます。

市場にいる見込み客の発掘に時間をかける必要はありませんし、業者が納得しさえすればすぐに交渉がまとまります。

仲介では概ね売却成功までに3か月は見なければなりませんが、直接買取ならば数週間で現金化が可能です。

また仲介のように業者に手数料を支払う必要がないので、その分の出費を抑えることができます。

そして業者の見積額でそのまま売ることになるので、実際の売却金額がすぐにわかるため資金計画が立てやすいというのも利点です。

仲介では売り出し価格こそ売り手が決めるものの、購入希望者との価格交渉や売れ残り時の値下げリスクなどを抱えていますから、実際の売却金額は不透明です。

直接買取ならば車の売却と同じようにその場ですぐに手にする金額が分かるのでシンプルで、資金計画が立てやすくなります。

金銭面以外では売れにくい物件でも買い取ってくれる可能性が上がることや法的リスクを避けるという点もメリットです。

一般の購入層は自分で住むために購入するわけですので、住みやすさや利用のしやすさに難があれば安くても買ってくれません。

老築化が激しい物件や立地条件などで不利な物件はなかなか買い手がつかないことも往々にしてあります。

直接買取ではプロの業者が付加価値を付けて利用することができるので、一般客が買ってくれそうにない物件でも買い取ってくれる可能性がグンと上がります。

法的な面では、仲介によって市場の個人に物件を売却した場合原則として売り主は瑕疵担保責任というものを負います。

これは屋根裏や基礎など一見しては分からないような箇所に不具合や欠陥があり、このために買い主が不利益を被った場合は、売り主がその補修などの責任を負うものです。

瑕疵担保責任は不動産に詳しくない個人の買い手を保護するためのものですが、買取の場合は買い手がプロの不動産業者です。

そのため買取では多くの場合売り主は瑕疵担保責任を負わなくて済むのです。

最後に、売却物件を広告露出しないことによるメリットとして、周囲に知られずに売却できるという利点を挙げます。

仲介では大々的に売り出す物件を広告に載せ宣伝しますから、自分の家が売りに出されるとそのお隣の奥様などに気づかれて「離婚かしら」などと勘繰られてしまうこともあります。

中には周囲に気づかれたくない方もいらっしゃると思いますが直接買取の場合は広告に乗らないので周囲に気づかれるリスクも下がります。

買取のデメリット

一方、買取にはデメリットもあります。

市場の一般購入者を探さずに直に買取を依頼できるのが利点となるものの、市場価値では売れないのが最大のデメリットです。

というのも上述したように買取の場合はその業者が直接買い取り、費用をかけてリフォームや改修を行って再販したり賃貸したりして利益を出していきます。

業者がその物件から利益を生み出すためには先行投資が必要になるわけですから、市場の相場で買い取ってしまっては利益が削られてします。

従って買取の段階で相当の値を下げた査定額となるのが普通です。

およそ市場価格の70%~60%まで下落してしまうので、金額的に非常に大きな難点となります。

従って、「より高く売る」ことが目標になる多くの売却事例では直接買取よりも仲介により行うことになるので、不動産の売却と言えば=仲介を指すことが多いです。

選択肢に上がる優先度が低い直接買取ですが、どんな場合に検討すると有利になるのか、次の項で見てみましょう。

直接買取が検討されるケースとは?

直接買取の利点は何と言っても売却完了までのスピードと確実性です。

税金や債務の支払いなど現金を用意しなければならない日程が決まっている場合はその時までに確実に現金化でき、その金額も仲介のように不透明ではなくすぐに明らかになるので安心です。

そして一般客がなかなか買ってくれそうにない難がある物件であっても、事業力がある業者によって付加価値を付けることができるので、少々古かったり立地条件が悪い物件でも売ることができます。

仲介では売却が難しい上記のようなケースで買取を検討すると良いでしょう。

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